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「うつ」を経験した元リワークスタッフが考える「うつ」からの回復に必要なこと

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はじめに

 

「うつ状態」から回復するために必要なこととして、皆さんはどのようなことをイメージするでしょうか。今回は、自分自身の休職経験を振り返りながら、改めて「うつ」からの回復について必要なことを考えてみたいと思います。

 

なお、ここではあえて「うつ病」という表現はしていません。いまは「うつ病」で休職に至る人は少なく、抑うつ状態、不安障害、適応障害、自律神経失調症、双極性障害、発達障害など、さまざまな診断名がついています。それらに共通しているのが“うつ状態”であること。そこで、ここでは“「うつ」からの回復”と表現することにしました。

  

「うつ」からの回復に必要な7つのポイント

 

私が初めて休職し、長期間休んだのは社会人3年目のことでした。まだ「うつ」に対する職場としての理解や制度はなく、リワークなどもなかった頃です。7ヶ月間の休職を経て復職し、転職するまで再発することなく過ごすことができました。

 

そういった自分自身の経験を振り返り、また“うつ病リワーク”のスタッフを経験して、「うつ」からの回復に必要だと思うことを挙げてみます。

 

  1. 休養と服薬
  2. 生活リズムの改善
  3. 外出や家事
  4. 軽い運動
  5. 疾患や薬についての理解
  6. 対人交流
  7. 自己分析

 

上記に挙げた7点は、私自身が休職中に行ったことでもあります。まだリワークもなく知識もない中、自分で必要だと思うことを考えて実践していました。その結果、7ヶ月間で復職し、その後も同じ会社で働き続けることができたのだと思います。

 

1.休養と服薬

休職に入ったばかりの頃は、まだ心身が疲れ切っている状態だと思います。まずは、ゆっくりと休むこと、そして心療内科や精神科に通院し、服薬することが必要です。時間をかければ、もしくは症状が軽ければ、服薬しなくても回復できることがあるかもしれません。しかし、うつ状態のときには脳内物質のバランスが崩れているといわれています。自分に合った薬を服用して脳内物質のバランスを調整しながら、次のステップに進むことで、早い回復が望めるのではないかと思います。薬の種類については、「疾患や薬についての理解」の項目で触れる予定です。

 

2.生活リズムの改善

心身の疲れがある程度とれてきたら、生活リズムを意識するようにします。ポイントは同じ時間に起き、同じ時間に食事をし、同じ時間に寝ることです。仕事をしていた頃と同じ時間にできることが理想ではありますが、はじめのうちは現実的な時間を設定するようにします。できれば手帳や生活リズム表を用意して、毎日の記録をつけるとよいでしょう。目標通りに実践できているかを確認し、どうすれば改善できるかを考えることができます。また、後で振り返ったときに、変化を視覚的に捉えることができるので便利です。

 

3.外出や家事

生活リズムを整え始める頃になると、日中の過ごし方が問題になります。以前、セロトニンを活性化させるためのポイントをまとめたことがありますが、夜の睡眠のためにも、日光を浴びることが大切です。はじめのうちは家の中の窓際で日の光を浴びても構いませんが、できれば毎日時間を決めて短時間でも外に出るようにしましょう。

 

また、生活リズムを安定させるために、家事に取り組むこともおすすめです。家にいる時間が長いと、どうしても横になったりしなくなってしまいます。そこで、家の中にいてできることを自分の日課にするのです。

 

私が休職に入った頃、自分の部屋がかなり散らかっていました。それを少しずつ片づけたり、洗濯したりするなど、できることから取り組んだ記憶があります。“きれいに整理する”ことで、頭の中もすっきりと整理されていきます。私の場合、料理に取り組むことができたのは、復職直前になってからです。メニューや材料を考え、マルチタスクをこなして何かを作るという行為は、ハードルの高いことでした。

 

4.軽い運動

休職に入ったばかりの頃は、横になっている時間も長くなります。そして、何をするにも億劫感がつきまといます。すると、気づかぬうちに体力が落ちてしまっているものです。はじめのうちは、疲れをとるためにもゆっくり休むことに専念する必要がありますが、少し回復してきたら筋肉を取り戻すことも大切になります。私自身、以前こちらで紹介した5分間の筋トレによって少しずつ筋肉をつけることにより、以前よりも身体を動かしやすくなった経験があります。筋肉をつけることにより、疲れも感じにくくなるのです。運動は、長く続けられるものであれば、何でもよいかと思います。

 

また、身体を動かすことは、セロトニンを活性化させるためにも重要です。セロトニンを活性化させることの重要性とその方法については、他の記事を参考にしていただければと思います。

  

5.疾患や薬についての理解

リワークなどでは、必ず疾病教育が行われていますが、リワークに行っていなくても、自分が診断された疾患とその薬について理解しておくことは非常に重要なことです。発症の原因や具体的な症状、治療法など、自分で調べて把握しておきましょう。

 

以前、コンコーダンスについてご紹介したことがありますが、治療は基本的に自分で行うものであるという意識が大切です。医師から言われるがまま服薬するのではなく、なぜ自分がその薬を飲むのか、その薬の効能や副作用は何かを自分でも調べ、疑問があれば医師や薬剤師に相談できるようにしましょう。

 

 

「うつ病」の薬としては、抗うつ薬のSSRIやSNRIなどが有名です。しかし、ここで言う「うつ」の場合、必ずしも抗うつ薬が有効とは限りません。重い「うつ病」ではない場合、はじめのうちは、抗不安薬が処方されることも多いかと思います。双極Ⅱ型障害の場合は、気分安定薬を軸に、非定型抗精神病薬を服用することもあります。

 

複数の薬が処方されている場合、それぞれの薬の特徴を知らなければ、どの薬が効いているのか判断することができません。また、多剤併用によって症状が悪化するというケースもあるようです。最近では、単剤処方が推奨されていますので、あまり多くの種類の薬が処方される場合は、医師にその理由を確認したほうがよいでしょう。

 

6.対人交流

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休職中、ずっと家で過ごしていると、人との交流がほとんどなくなることがあります。しかし、人との交流がなくなればなくなるほど、社会復帰への自信はなくなっていってしまいます。私が休職したときは、同時期に休職していた同じ部署の同僚と会ったり、営業中の同期が、アポの合間にカフェに会いに来てくれたりしました。同じような境遇にある仲間と話をしたりすることで安心感を得られますし、自分にとっての理解者との会話もまた、不安を解消し、自信を取り戻すきっかけとなるでしょう。

 

リワークに参加すると、同じ境遇にある仲間と話ができることはもちろん、プログラムでもグループで一緒に課題に取り組んだりします。仕事の場面を想定したコミュニケーションのトレーニングもできますので、よいリハビリになるのではないかと思います。

 

私の場合は、復職間近になった頃、アロマセラピーの学校に通っていました。毎朝9時からの授業を受け、夕方に帰宅します。そこで友達になった人たちとの交流もありました。内容こそ違えども、それが私にとっての「リワーク」だったように思います。

 

7.自己分析

なぜ休職するに至ったかを振り返ることは、再び休職することを防ぐためにも重要なことです。職場の環境や人間関係のせいにすることは簡単ですが、同じ状況でもストレスを感じにくい人はいます。自分のどのような考え方や行動が、ストレスを感じる要因となったのか、自分なりに考えてみましょう。また、ストレス対処の方法の一つとして「認知行動療法」の考え方も有効です。何かあったときに瞬間的に浮かぶ「自動思考」や考え方のクセに気づき、その考え方を柔軟に変えていくことで、ストレスが軽減されていくことがあります。認知行動療法については、書籍も多く出ていますので、自分で学ぶこともできます。

 

また、体調を崩し始めた頃の症状を把握しておくことも重要です。同じように予兆となる症状があったときに対処することができるからです。さらに、環境の変化などがなかったかも振り返ります。どのような変化や環境で発症しやすいのかを把握しておくことで、同じような状況を前にしたときに対処することも可能になります。

 

おわりに

 

簡単ではありますが、「うつ」からの回復に向けて必要なことをまとめてみました。これがすべてできれば、社会復帰できるだろうと思います。しかし、すべてを実践するのは簡単なことではありません。自分でできるという方もいらっしゃるかと思いますが、自信がない方は、リワークをはじめとするリハビリ施設を利用することをおすすめします。リワークは、基本的に休職されている方が復職するためのリハビリを行う場所ですので、すでに退職していて障害者雇用での就労を考えている方は、就労移行支援事業所などを利用されるとよいかと思います。自分の状況や状態に合ったサービスを見つけることがポイントです。

 

各項目の詳しい内容については、他の記事でも詳しく書いていますので、ぜひご覧いただければと思います。