精神疾患やメンタルヘルスへの理解を促進する方法について考えたとき、どのような手段が思い浮かぶでしょうか?さまざまな方法がある中で、今回は「アウェアネス・リボン」をご紹介したいと思います。
「アウェアネス・リボン」について理解する
アウェアネス・リボンとは
アウェアネス・リボンは、輪を作って留めたリボンやそれを描いた絵で、社会運動、社会問題に対しての支援や賛同の意思を表すシンボルマークです。「アウェアネス」は、意識や気づきを意味する英語で、リボンの色によってどのような問題や運動について意思を示しているかが表されています。
アウェアネス・リボンの種類と目的
日本では、特にピンクリボン(乳がん予防キャンペーン)が有名でしょうか。アウェアネス・リボンの中で、最も古いのはイエローリボンであるといわれています。戦地に赴く兵士の無事を祈る意味で、1900年代初頭にアメリカで用いられていたそうです。
他にもウェアネス・リボンには、下記のようなものがあります。
レッドリボン エイズ患者の支援
ホワイトリボン 平和や飢餓に関する支援活動
オレンジリボン 海外:反人種差別
日本国内:児童虐待防止
ブルーリボン 受動喫煙防止、インターネットにおける言論の自由
北朝鮮による日本人拉致被害者救出
グリーンリボン 環境保護活動、臓器移植の普及、臍帯血による再生医療の促進
パープルリボン 女性へのDV根絶、膵臓癌に関する啓発ほか多数
イエローリボン ヨーロッパ・アメリカ:戦地の自国兵への連帯意識
日本:障害のある人の社会参加推進
ティール&ホワイトリボン 子宮頸癌の予防啓発活動
「シルバーリボン」について理解する
シルバーリボン運動の始まり
精神疾患やメンタルヘルスへの理解促進を目的としたリボン、それが「シルバーリボン」です。シルバーリボン運動は、1993年に米国カリフォルニア州の弁護士ジーン・リーシティ氏によって始められました。リーシティ氏の息子が統合失調症を発病したとき、周囲から精神疾患に対する理解を得ることは簡単ではなく、さまざまな偏見や差別に苦しめられたといいます。しかし、行動を起こさなければ何も変わらないと、リーシティ氏は手作りで銀色のリボンを作り始めました。そのリボンには、「統合失調症に対して理解を示します」といったメッセージが込められており、それを協力者につけてもらうことで、統合失調症に対する理解を求めたのです。
その取り組みは、その後、アメリカ中に広がり、「脳や心に起因する疾患への理解を深めます」というメッセージが込められた一大チャリティー運動に発展していきます。
シルバーリボン運動が世界で広く知られるようになったのは、映画「ビューティフル・マインド」がきっかけでした。統合失調症を患った天才数学者が、病に翻弄されながらも後に克服し、やがて功績を認められノーベル賞を受賞する物語です。2002年に行われたアカデミー賞の授賞式で、ロン・ハワード監督が胸にシルバーリボンをつけていたことで有名になり、シルバーリボン運動は、世界的に展開されるようになりました。
日本でのシルバーリボン運動
2002年、日本事務局が福島県内に誕生します。学生時代、リーシティ宅にホームステイをしていた日本事務局の現会長が、日本で運動を広めてくれないかとリーシティ氏から依頼されたことが始まりだったそうです。その後、2007年には日本事務局公認のもと、横浜事務局が設立されました。そしていま、日本事務局と横浜事務局がひとつになって、シルバーリボン運動を展開しています。
私たちにできるシルバーリボン運動
シルバーリボンのシルバーは、“精神疾患への差別や偏見を乗り越えるための色”です。私は、シルバーリボンのピンバッジをバッグにつけたりしています。これをつけていると、友人や同僚からそれは何かと聞かれるので、その度に説明をします。シルバーリボンが話題のきっかけとなり、説明する機会ができるのです。しかも、他のリボンよりもおしゃれだと言ってくれる人もいました。
小さなことかもしれませんが、精神疾患を理解している一人ひとりが、そうでない人に説明する機会を作ることで、理解者を増やすことができるかもしれません。差別や偏見を嘆いているだけでは、残念ながら何も変わらないでしょう。小さなことでも、できることから行動に移してみませんか?