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「コンコーダンス」という言葉を知っていますか?患者としての治療スタンスを考える

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はじめに

 

私がリワークで復職支援をしていたとき、利用者の方の中に、自分が飲んでいる薬のことをあまりよく知らなかったり、主治医に言われるままに服薬したりしている方がいらっしゃいました。私は、このことにかなり驚きました。自分の身体に入るものなのに、言われたままで大丈夫だろうか、医者を信じ過ぎてはいないだろうかと、心配に思ったことを覚えています。

 

今回は、医療機関を利用して治療に取り組む際の“患者としてのスタンス”について考えてみたいと思います。

 

知識をもって治療に臨むことの重要性

 

冒頭のリワーク利用者の方の服薬に関することについてですが、本当に状態がよくないとき、薬について調べるゆとりがないというのはわかります。しかし、リワークに参加できているということは、ある程度リハビリが進んでいるということです。何のために飲んでいる薬なのか、それぞれの薬の効果や副作用くらいは把握しておいたほうがいいかと思います。薬の効果や副作用を把握していないと、自分の状態の変化が何によるものなのかに気づくことができなくなることがあるからです。

 

私自身の経験ですが、心療内科で処方された薬を飲んだとき、発熱し、首に湿疹が出たことがありました。主治医も気づかず、休日診療で内科を受診して風邪薬が処方されたのですが、よくなる気配がありません。もしや薬の副作用ではないかとよく調べてみると、そういった副作用が出るケースもあるということがわかりました。処方時に渡されていた「お薬の説明」には書かれていない副作用だったのです。

 

医師任せにせず、自分で調べることの大切さを実感した経験でした。これは極端な例ですが、例えば、日常的に眠気や身体のだるさなどがあるとき、それが症状によるものなのか、薬の副作用によるものなのかは判断する必要があります。単に症状を伝えただけでは医師も気づきにくいですから、日頃から自分の状態をよく見ておき、服薬後の変化に気づくことが大事です。

 

「コンコーダンス」という考え方

 

日本でも、コンコーダンスの考え方が重視されるようになっています。まずは、その意味について確認していきましょう。

コンコーダンス(Concordance)とは、英国で1993年ごろから発展してきた服薬や薬物治療に対する考え方。英国保健省と英国王立薬剤師会が共同で設置した Medicines Pharnership Group にて、服薬コンプライアンスの向上のために検討された。その際の定義は「服薬に関し患者の考えを尊重する話し合いの後に患者と医療者が到達する合意」。Marinker M. (1997) は「パートナーシップに基づき、患者と医療従事者間で疾患や治療について情報を共有した上で話し合い治療を決定し、そこには専門家としての患者の知識および意見が十分に考慮される」と説明した。

(出典:ウィキペディア)

「コンコーダンス」とは、『患者と医療者が同じチームの一員』と考える概念で、患者と医療者がパートナーシップに基づき、両者間で情報を共有し、対等の立場で話合った上で治療(服薬も含みます)を決定していくことを目指します。そのために、医療者は治療や服薬だけでなく、患者の価値観やライフスタイルなどを尊重し、感情的な側面や生活に関わる問題にも寄り添うことが必要とされています。患者もまた、医療者とよりよいコミュニケーションを築き意思決定していくことで、治療(服薬)に積極的に参加し、目標に向かって進んでいくことが期待されています。

(出典:くすりの適正使用協議会)

 

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昔は、薬や治療方法について調べる手段や情報そのものが少なく、医療者から言われたこと以外の情報を得ることが難しかったかもしれません。医療者の中には、丁寧に説明してくれる医師もいれば、自分の言うことは絶対だから、患者は言うことを聞いておけばいいという医療者もいたようです。

 

しかし、いまは時代が変わってきています。そもそも医療者も人間であり、言っていることが100%正しいとは限りません。患者自らが情報をもち、わからないことは医療者に聞いて疑問を解決し、納得して治療を進めていくことが可能です。短い診察時間の中でそれを行う場合、何でもかんでも質問していては時間が足りなくなってしまいますから、事前に自分で薬や治療方法についての情報を得て、可能であれば自分なりの考えや仮説をもっておくことが大切です。もし、こちらがそういったスタンスで治療に臨めない病院や医療者であれば、転医を考える必要があるかもしれません。

 

おわりに

 

皆さんは、自分が飲む薬について、その種類や効果、副作用まで把握しているでしょうか。まずはどのような診断のもとでその薬が処方されているのかということから把握しておくことが大切です。自分の身に何かあったときに後悔しないよう、日頃から主体性をもち、自分の意思で治療に取り組んでいるのだという意識が大切ではないかと思います。