はじめに
3ヶ月の休職からの退職を決める
3ヶ月の休職を経て、私は精神科病院を退職しました。まだ復職できる状態にないこと、それ以上休むと余剰人員を採用できない職場に迷惑をかけてしまうと思ったことなどから、このタイミングでの退職を決めました。
ちなみに職場としての精神科病院は、厳しい経営状況の中、最低限の人員配置が専門職ごとにが決められています。毎月、状態について確認の電話があったり、私が休んだ穴を他のスタッフが埋めてくれていると思うとなんとなくプレッシャーを感じ、ゆっくりと休養している気になれなかったというのが正直なところです。
休職のきっかけ
今回の休職は、4月に内科的治療のために入院したことがきっかけでした。長い絶食期間があったせいか、体力が低下していたり、術後の患部に痛みがあったりと、復帰後も影響が続いていたのです。
そして、それまでに蓄積された疲労やストレスの大きさに改めて気づいた途端、身体が動かなくなりました。それまでも身体からのSOSはあったものの、とうとうストライキを起こされたという感覚です。自分の気持ちに素直にならざるを得なくなりました。
過去に休職経験があったことから、働き方には気をつけていたつもりです。考え方を変えたり、ストレスに対処する方法も身につけていました。それでも、長い通勤時間や人手不足も含めた職場の環境に適応することも、環境を変えることも難しく、疲れやストレスを徐々に溜めていったのでした。
HSP(Highly Sensitive Pserson)が働くということ
リワークと「繊細さんの本」
ある時、リワークの卒業生がHSPに関する書籍を共有してくれたとき、私もHSPだと思うと話すと、その本を貸してくれました。
実は、私はリワークデイケアで精神保健福祉士として働いていました。当初は一般デイケアに所属し、週に2日リワークに入っていたのですが、スタッフの一人が休職に入ったことから、週5日リワークに入ることに。皮肉なことに、私が疲れやストレスを2倍にも感じるようになったのは、リワーク専属になった頃からです。一般デイケアに比べ、明らかに人員が不足しているという事実もありました。
精神保健福祉士になる前、私が会社員からフリーランスになったのは、自分がしたいことをするためでした。しかし、結果的にフリーランスという働き方が自分に合っていたと思うのは、私がHSPだからではないかと思います。組織で働き続けるには、環境が大事だということを改めて感じました。
「繊細さん」が幸せに働く条件
リワークの卒業生に借りて読んだ「繊細さんの本」は、元会社員でHSPでもある筆者が、自身の経験を交えて書いており、とても身近に感じることができました。特に「しあわせに活躍できる仕事(適職)の選び方」について書かれていた箇所などが印象に残っています。
どんな仕事であっても、気持ちよく働いている繊細さんの共通点は、自分が思う「いいこと」「いいもの」を仕事にしているということだそうです。繊細さんは感じる力が強く良心的なため、心の中の小さな違和感を「まぁいっか」と流したり、なぁなぁにすることができないと。これはよくわかります。
また、「適職の条件」について3つ挙げています。
筆者が挙げる適職の3条件は、
- やりたいと思えるか(想い)
- 得意を活かせるか(強み)
- 働き続けられる職場環境かどうか(環境)
私の場合は、3番目の条件が満たされていなかったのだと思います。
全力で逃げるべきときがある
一番印象に残っているのが「全力で逃げるべきときがある」の項目です。繊細さんに知っておいて欲しいこととして、働き方の最後に挙げていたこと。それは、「仕事よりも心身の健康が大切だ」ということでした。
「繊細さんの本」より引用:
繊細さんは良心的でがんばり屋。ストレスフルな職場環境でも「自分がやらなきゃ」「いま仕事を辞めたら同僚に負担がかかる」と思うあまり、限界を越えて頑張り過ぎる傾向にあります。
でも、仕事がうまくいかないときって、「人が足りない」「納期が短い」「部署間のコミュニケーションがうまくいかない」など、組織全体の問題であることも多いのです。自分ひとりのかんばりで対応しようとするのは無理があります。(中略)
「この仕事/職場にい続けたらまずい」
そう思ったら、同僚にどれだけ迷惑をかけようと、仕事の責任が残っていようと、すべて放り出して全力で逃げてください。
人生には逃げるべきときがあります。仕事よりも他人よりも、自分の心身を最優先にしてください。
休職に入る前、実は退職を考えて上司に話したことがあります。その後、上司から「辞めないで済む方法はないか」と提案をいただき、勤務日数や勤務時間等を含めて再検討していました。人員不足についても検討してくれるとのことでした。しかし、今後の自分の生活を長期的に考えたとき、「もし仮に異動したとしても、この職場では長くは働けないだろう」と思いました。入院を経て最後に背中を押してくれたのは、この本にあったこれらの言葉だったような気がします。
最後に
この本は、繊細さんがラクになれる基本に始まり、人間関係をラクにする技術、肩の力を抜いてのびのび働く技術、そして自分を活かす技術などについて、筆者のカウンセリングで得た実例も含めて書かれています。
経験者だからこそわかることが、そこに書かれています。読むと、自分を癒すことにもつながるのではないかと思います。自分もHSPではないかと思っている方に、ぜひお勧めしたい一冊です。
「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本